幸せの絶頂と不幸のどん底
もうすぐ点滴治療が始まる。
血管確保にまた何回も刺されるのか……
そもそも腫瘍は小さくなっているのか、転移などしてないだろうか。
腫瘍縮小できたら外科のオペが待っている。
がん患者の悩みは尽きない。
私の年齢だと、キャリアアップや、結婚、出産と薔薇色の年代である。
私にはそのような時代はまだ来そうにない、というかずっと来ないかもしれない。
だから、辛い。
友人誰にも病状の告白はしておらず、今はもうすぐ挙式をあげる友人に、みな夢中だ。
その輪に私は入れない。
手足症候群も、ペンを握るのもつらいくらいになっているし、挙式にも催しにも勿論参加できない。
このような高低さで自分が世界の不幸を一心に受けているかのような錯覚に陥る。
つらい。
むなしい。
悲しい。
この時点で闘病を支えてくれるパートナーに出会えなかったのだから、一生自分には縁のないことだと諦めている。
ないものねだり。
私はそんなに強くない。
むなしくて、今日も眠れそうにない。
苦難の山を越えたら、そこにあるのはユートピアか。
そうであればいいのに、と切実に思う。
私はあといくつ山を越えたらいいのだろう。
もう、これ以上つらい思いはしたくないというのに。
- 作者: トマスモア,沢田昭夫
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